届かないこの想いを、胸に秘めて。





ふたりの間に冷たい風が通った。

そして、告げられる。


彼の想いが。





「……ごめん。混乱させるようなこと言って」


笑ってるけど悲しい目をするから、目頭が熱くなってきた。


「ずっと長田さんを見てたから、すぐ分かったよ」


長田さんの好きな人を、と小さく笑って言う。




……なんで私は、彼を好きにならなかったんだろう。
こんなにも想ってくれている彼を。


どうして私が恋したのはキミなんだろう。


キミに恋をしていなかったら、きっとこんなに辛く苦しい思いはしないと思うのに。



それは目の前にいる彼も同じことを思っているはず。


そう思うと涙が溢れてしまって。




ごめんね……ごめんなさい……っ。




「そんな謝んないでよ。長田さんは悪くないじゃん」


私は首を横に振り続ける。


頭に乗っかった手が何度も跳ねる。

温かいけど、苦しくなる。



彼も苦しいと思うから。

違う人を想っている好きな人の頭を撫でるなんて絶対苦しいはずなのに、彼の手は休めることなくずっとそうしている。





……鴇田くんは優しすぎるんだ。

苦しくて泣きたいはずなのに、表情を一つも崩さないでいる彼を、うらやましいと思った。






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