届かないこの想いを、胸に秘めて。





体が離れて今度は冷たい風が私を包んだ。




「ごめん。ちょっと、ね」


何かを誤魔化すように薄ら笑いを浮かべる鴇田くんに不思議に思ったけど、あまり踏み込むのもよくないと思ったから笑ってみた。





「っ……行こっか」


私を追い越して階段を下りた鴇田くん。

私も下りきって隣についた。



少し頬が染まった彼の顔は、暗くて私には見えなかった。




駅までは、お互い何も喋らず、静かだった。




「ねぇ、長田さん」

「なに?」

「……俺のこと、少しでも考えてくれたら、嬉しいな」



改札口を出て、それぞれ違うホームへ向かう途中に告げられた。



頭をかく彼の顔は赤くなっていて、私も伝染したみたいで、同じ色に染まった。


頷くと、柔らかく笑って「ありがとう」と伝えた彼は手を振ってエスカレーターへ。




私も振り返してエスカレーターへ向かって上の階のホームに着くと、


向かい側に鴇田くんがいて、先に手を振られ同じく振り返した。










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