届かないこの想いを、胸に秘めて。
『長田さんのこと、好きなんだ』
家に着き、部屋に入ると、
暗闇の中、私に告げた彼を思い出した。
そう思い出させたのは部屋が外と同じくらいに暗かったから。
切なく微笑んだ彼。
とても苦しそうなのに、それでも笑う彼を私はただ涙を流しながら、見つめることしかできなかった。
なんで私は彼を好きにならなかったんだろうって思って。
なんでキミなんだろうって。
こんな時でも、キミを想ってしまう私は最低だと思った。
『……俺のこと、少しでも考えてくれたら、嬉しいな』
そう言われたのに、目を閉じるとキミが浮かぶ。
思い出したくない日でもキミは私の前に現れる。
『諦めてほしい』
桃田さんは以前私にそう言ったけど、私には出来なかったよ。
幾度か諦めようとした。でもダメで。
キミを見つける度に、話す度に、笑いかけてくる度に、どんどん想いは積み重なっていくんだ。
「……ばか」
部屋に小さく響いた声は虫の声で掻き消された。
この苦しい想いも、掻き消されればいいのに……。
そう思ってから、小さく声に出してみた。
キミに秘めた想いを。
──ストン。
その言葉はそのまま心に積み重なった。