届かないこの想いを、胸に秘めて。





──ッ。


足が止まってしまった。
息も一瞬。


キミと目が合った。

でも違うと思ったから一度逸らして、やっぱ気になってまたキミを見ると、


今度は手を振っていた。小さく。



キミは何かを察したのか分からないけど、私を指さしてもう一度手を振る。


ふわりと笑うキミに手を振った。



止まっていた足をなんとか前に踏み出す。




……私、ちゃんと笑えてたかな?



嬉しい。とても。
キミが私を見つけてくれたことに。

でも、キミを見ると苦しいとも感じた。




突如、泣きたくなった。



すぐ近くで聞こえた声に。

キミを呼ぶ桃田さんの声で。






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