届かないこの想いを、胸に秘めて。





ぼーっとキミを見ていると、息が詰まった。


前にいるキミは今、楽しそうに笑ってる。




……一瞬、こっちに目を向けたのは、気のせい?


チラッと私をみた気がした。


ドキドキと自分の中で大きく響く。

気のせいなのに。
私の想いなんて届いていないのに。


キミがこっちを見たのは偶然?それとも……。


そんなわけないか。ある訳ないんだ。こんなことは。
そう、ただの思い過ごし。気のせい。


そう自分に言い聞かせるけど、胸が苦しくなって不覚にも泣きそうになった。






帰りは、鴇田くんと。

もう辺りはすっかり暗闇に包まれていた。
月も星も見させない厚い灰色の雲に。



いつもこの日は、キミとサナくんの3人で帰っているのに、事前に断ってきたみたい。


なぜだかチクリと胸が痛んだ。







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