届かないこの想いを、胸に秘めて。
やっぱり鴇田くんの気持ちには応えられない、かもしれない。
だって彼がいる傍でも、キミのことを探して想ってしまうんだ。
つくづく私は最低な人間だと思う。
……ごめんね、鴇田くん。
近いうちに伝えないといけないと思うと、心が痛んだ。
意図的に空を見上げる。少し雲に隙間がみえた。
あと2分くらいすれば電車が来る。
ホームにはさっきよりも人が集まってきていた。向かいのホームも。
何気なく、横を向いた。
胸がドキッとしたのは、見覚えのあるシルエットを目にしたから。
つい小さく声を上げて、とっさに口をつぐむ。
私の声はやっぱり聞こえていないらしく、キミは本に夢中だった。
ほんの少し。本当に少しだけ、残念に思った。
やっぱキミには届かないって。
小さな声でも、キミは私を見つけてもらえないって。
ホッとしているのに、どこか寂しい。
──……ねぇ。こんな小さな声でも届かないのなら、同じようにして伝えてもキミには届かないのかな?