届かないこの想いを、胸に秘めて。
「長田さん、今日はお疲れさま」
頭上でした声にドキッとしてその反動で上を向いた。
優しく笑うキミが、目の前に。
そう思い始めたら更に加速していった。
自分にしか聞こえない大きな音。
それがキミに聞こえていないと思うと安心して、寂しくなった。
何か話さなきゃ、そう思って出た言葉はあまりにも滑稽で。
『隣、どうぞ』って……。
もっといい言い方はなかったのだろうかと言い終わった頃に思った。
そしてアナウンスが入った。
「あ、……電車来るね」
「ほ、ほんとだ、ね」
……タイミングが悪すぎるっ。
キミは私を見て笑ってるから、恥ずかしくなって下を向いた。
顔が熱すぎる。こんな顔キミには見せられないよ。
プワーと響かせる音に私は立ち上がった。
自然とキミの隣に並び、ともに停車した電車に向かう。
思ったより距離が近くて、下唇を噛んだ。
開かれたドアへ足を踏み入れると、名残惜しく感じた。
キミともうすぐ別れると思うと、切なくなった。
もっと話していたかったなって。
もっとキミといたいなって。
時間が止まってくれればいいのにって心から願った。