届かないこの想いを、胸に秘めて。





なんで、そんなこと。

なぜか嫌な予感がした。


それなのに私の口は正直で「あるよ」と言っていた。



自分が馬鹿正直すぎて笑えてくる。

なんでこんな時に限ってウソがつけないんだろう。

……本当に、バカだ。




「へぇ……そっ、か」



ねぇ、キミはいま何を思っているの?

それを聞いて、どうするの?




……次の言葉を聞くのが怖いよ。





「恋ってどんな感じかな」


ポツっと言った小さな声が耳に飛び込んできた。

キミが近くにいるからとかじゃなくて、心の声が聞こえた感じ。


たぶん私に聞こえない声で言ったんだと思う。




キミの横顔を見る。

宙を見ているその目はいま誰が映っているのだろう。


そう言うってことはキミにも想う人がいるってことなんだ、よね?


……それをキミは恋だとわかっていない。





「……知りたいの?」


勝手に口が動いていて、声に出していた。それはとても自然に。



特別キミだけに遣う敬語も気が付けばなくなってた。







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