届かないこの想いを、胸に秘めて。





なんで私はこんなことをキミに話してるんだろう?


こんなの苦しくなるだけなのに。

もう既にピークは来ているのだけれど。



走り出したら止められないみたい。
もう次期キミは〝恋〟だと気付いてしまう。



その瞬間、私の恋は──。





「……長田さんって好きな人いるんだ?」

「……うん、いるよ」



いま、私の目の前にいるよ。
はじめて会った時から、ずっと。


キミのことが、好きなんだよ?



キミの顔を見たいのに怖くて見れない。





「そっ、か……。そうなんだ」


キミの声だけが聞こえる。
なんだか苦しげな感情がこもっているように思えた。




「……中村くんは?」


なんとか今にも崩れそうな心を持ち堪えて、聞いてみた。


握った手がかすかに震える。
それを隠すように右手で覆った。




「俺もね、嬉しくなったり楽しく感じたりするんだ」



ズキ。



「でも、時々ここが凄く息苦しくなる時があるんだよね」


そう言ってキミは右手で胸を抑えた。
何かを思い出しながら切なく笑うキミに、私は悲しくなった。




「これって、恋だと思う?」


とても悲しい質問だと思った。
私には残酷すぎる質問。



苦しすぎる。もう限界はすぐ近くまで迫っていた。



それでもこの質問に答えなければならない。


だってこんなにもキミが求めているから。







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