届かないこの想いを、胸に秘めて。





冬休み前日の朝。

起きるとやっぱり涙の跡が残っていた。

寝ながら泣いていたせいか体が重く感じた。



……いつまでこんな日々が続くのだろう?
早く終わってしまえばいいのに。


そうすればこの苦しみから解放されると思うんだけどな……。




通学途中、街全体はキラキラしていた。
まだ朝なのに。

特に駅周辺は大きなクリスマスツリーがあるせいで、クリスマス感をより漂わせていた。



授業はなく、朝の集会とLHR(ロングホームルーム)のみで学校は終了した。


勉強との解放でみんな歓喜の声をあげている。

前の席にいる香奈恵ちゃんは背伸びをしてから、机に突っ伏していた。


私の隣の隣にいる和海ちゃんはスマホとにらめっこをしている。



……番くんと連絡を取っているのかな?


香奈恵ちゃんの後ろで同じく俯いて、にらめっこをしているから。




何やら昨日の夜から喧嘩したみたい。
用件はクリスマスのことらしいんだよね。

詳しいことは聞いていないんだけど。




付き合っても壁はあるものなんだなって思った。


でもその壁は少し経てば乗り越えられるんじゃないかな?

私の壁と和海ちゃんたちの壁は、厚さも堅さも、高さも違う気がする。


だから2人はちゃんと仲直りできると思うよ。




和海ちゃんがふとこっちを見たから、笑った。
彼女も同じように笑い返して、こっちへ来る。



「あれ?もういいの?」

「うん、大したことないから」

そう言った和海ちゃんはニッと微笑んだ。



……ほら、乗り越えられてる。

彼女の笑顔を見てそう確信し、安心した。




「それよりも!せっちゃんこそ大丈夫なの?」




ここんとこは毎日のようにそうやって聞いてくる。

私のこと相当心配してくれてるみたい。


なんか申し訳なく思う。



「大丈夫だよ!」


やや明るめにトーンを上げて笑ってみせた。


一瞬私の目をまじまじと見つめてから、私の頭をポンと撫でた。







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