届かないこの想いを、胸に秘めて。
そんな顔をさせてるのは私のせい。
なんとか笑ってくれるように考えた結果、私は教卓に寄りかかってる香奈恵ちゃんの背後に立った。
そしてチョークを手にして黒板と向き合う。
「……なにしてんの」
「んー、チャレンジ、かな?」
そう言ってカツカツと音をならせて書いていく。
二つの文字。
書き終えると一歩下がってそれを見る。
ちょうど私の顔の横に香奈恵ちゃんの顔があった。
「……ぶっ、ククク」
「あ、なんで笑う……!」
「こんなのっ、願いじゃないでしょーよ」
しかも命令形っ、そう言って俯きながら肩を震わせるから私も笑った。
香奈恵ちゃん。これは願いだよ。
だってちゃんと笑ってるじゃん。
笑ってほしいからそう書いたんだもん。
〝笑え〟って。
丸っこい字で書かれた文字はなんとも滑稽で。
香奈恵ちゃんが笑ったのはジンクスのお陰というより、文字そのものに笑ったように思えた。
それでも、このジンクスは当たりだと隣で笑顔でいる彼女をみて思った。