届かないこの想いを、胸に秘めて。





「はぁぁぁっ、笑ったよ笑った」

目を擦って私を見た。


「やっぱりこのジンクス当たるんじゃない?」

「……かもね」

「だって私の願い叶ったもん!」


黒板に書かれた文字にぐるぐると丸を書いた。

やっぱりこの文字は可笑しく思う。



隣からシャッター音が聞こえて振り向くと笑顔で「おもしろいから記念ね」と言って、ポケットにそれをしまった。


なんの記念か分からないけど、これは面白いから後で送ってもらうことにした。




「さー、本番にいきましょっか?」

「へ?」

「『へ?』じゃない。ほらチョークを持つ!」


無理やり手に握られるチョークを見つめた。


なに、本番って?
なにこの展開。




「え、これからなにするの?」

「え、決まってるじゃん。実行するんだよ」

「さっきしたじゃん」



黒板を指さして言った。



「さっきのは『いい事が起こる』に繋がったわけじゃないでしょ。あれは笑わせてもらっただけ」

「でもっ、私にはそれがいい事に繋がったよ?」



だって笑ってほしくてそう願って書いたら、香奈恵ちゃん笑ってくれたもん。


紛れもなく私には『いい事』だよ。



それでも香奈恵ちゃんは首を横に振って聞こうとしないから、口を尖らせた。








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