届かないこの想いを、胸に秘めて。





「これ、どうしたの」

「ん?見ての通りだよ」

「いや、それは分かるけど」


香奈恵ちゃんとキミのやり取りに耳を傾けて、クスッと笑ったキミは「すごいね」と私を見た。


大きくドキンと跳ねた。
鼓動がテンポよく鳴る。



「なんで〝好き〟って書いてあるの?」



そうキミが指を置いた〝好き〟は私が書いたところだった。


そしてまた大きく跳ねる。


キミがそこに置いた指に意味なんてない。
分かってるはずなのに。


視界がぼやけるのを感じて、俯いた。



……あぁ、本当に終わってしまったんだ。



中村くん。
この文字はね、キミを想って書いたんだよ?

キミにはもう届かないから。言えないから。




最後に会いたいと願って書いた私の本当の想い。





香奈恵ちゃん。やっぱりこのジンクスは当たるんじゃないかな?

だってほら、私にとって最後のキセキが起こったんだもん。



この想いを最後にキミに会えたことが私にとって『いい事』なんだと思った。








< 233 / 306 >

この作品をシェア

pagetop