届かないこの想いを、胸に秘めて。
最後の願い
時間というものは速いもので、あっという間に新年を迎えた。
大晦日なんてすぐ昨日のことなんだけど、
去年のクリスマスも昨日のことのように思える。
……去年は、思い出深いことがたくさんあった、な。
ふと蘇る記憶に急いでフタをした。
突然、家中に響いた音に顔を上げて、玄関へ。
来たきた!
ナイスだよ。タイミング。
ドアノブに手をかけて押し開ける。
「やっほ!」
「よっす!」
笑顔のふたりが声を揃えて言った。
「いらっしゃい!どーぞ」
そう言ってふたりを家の中に入れる。
「「おじゃましまーす!」」
「あら、和海ちゃんと香奈恵ちゃん!いらっしゃい」
リビングから顔を覗かせて言うお母さんに2人は会釈をして、自分の部屋へ誘導する。
私の部屋は2階にあって、上りきった右側が私の部屋になる。
ドアを開けて、中に入ると香奈恵ちゃんが私のベッドにダイブした。
「わー、ベッドーー!」
「香奈恵、来て早々ベッドとか……」
和海ちゃんが呆れた声で言うと私と顔を合わせて笑った。
「では!改めましてっ」
丸いテーブルを囲んで改まった姿勢に正してから、3人揃ってお辞儀をした。
「「「明けましておめでとうございます!」」」
これは毎年恒例行事みたいなもので、昨年も同じように挨拶をしてた。
香奈恵ちゃんは2度目の恒例行事に参加しているはずなのに、もうずっと前から一緒にやってきていたような自然の流れでそうしていた。
「これからもよろしくね!」
「こちらこそ!」
「当たり前」
和海ちゃんが言うとそれぞれ誓いのような思いを込めて言った。
大丈夫だよ。だって私たちはとても固い絆で結ばれてるから。
たとえ大きな壁があったとしても、乗り越えられると思う。
それは去年、確かめ合うことが出来たから。
だから大丈夫。