届かないこの想いを、胸に秘めて。





キミが私に手を振る。

だから私も手を振った。



「なか──っ」



キミを呼ぼうとしたとき。


私を追い越した女の子が、キミの元へ。




「紗姫」

「淳介!」


そう呼び合った2人は私を見ずに背を向けて行ってしまう。





──待って!まってよ!



懸命に手を伸ばす。
後を追おうとするけど足はなぜか動かなくて。

まるで瞬間接着剤をつけたみたい。全くビクともしない。

さらには声も出なかった。





──ねえ!中村くん!まって!

──こっち見てよ!




そう叫ぶけどキミには届かなくて、そのまま白い光の向こうに消えてしまった。



すると自分の体が自由になった。

消えた方へ向かうと行き止まりで、今度は下へ落ちていくのを感じた。




っヤダ!まって!中村く──っ。





最後に見たのはキミが笑顔で手を振る姿だった。



そして暗闇に包まれていった……──。






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