届かないこの想いを、胸に秘めて。





「……さん!……ださん!」



だ、れ……?中村、くん?

ヤダ、行かないでっ!




「長田さん!!」

「っ…………ぁ」



呼ばれた勢いで目を開けた。

……鴇田くんだ。なんでいるの?



「よかった~……」

「ここ、は?」

「保健室だよ。覚えてない?倒れたの」

「……あ」



そっか。私倒れたんだった……。


意識がハッキリしてくると消毒の独特な匂いが鼻についた。



……懐かしい、夢、みたな。

あれを毎日のようにみていたんだな……。




「あら、長田さん起きた?」

「あ、起きました!」


私の代わりに鴇田くんが返事をした。

先生が近寄って私のおでこに手を当てる。



「ん〜、熱は大丈夫そうね」


そう言うと私を見て笑う。

久しぶりに見た気がする、先生の顔。
あの時と変わらない笑顔だなっと思った。


近くで2人の話し声を耳にしてそんなことを思うと、鴇田くんが私に手を振って保健室を出ていった。




「さて、長田さん?」

「は、はいっ」

「あなた、ここ最近寝てないでしょう?」



静かな空間に先生のなめらかな声が響いた。

黙る私に続けて話す。


「そして、食事もシッカリ食べてないんじゃない?だめよ。女の子は体を一番に大事にしないといけないのだから。朝ごはんは食べてるの?」


厳しい口調のままそう問うと、私はそれに首を横に振った。



「お昼は?」

「たべてます」

「夜は?」

「……残してます」


そう言うと先生はかなしい表情をして小さく微笑んだ。








< 248 / 306 >

この作品をシェア

pagetop