届かないこの想いを、胸に秘めて。
「……さん!……ださん!」
だ、れ……?中村、くん?
ヤダ、行かないでっ!
「長田さん!!」
「っ…………ぁ」
呼ばれた勢いで目を開けた。
……鴇田くんだ。なんでいるの?
「よかった~……」
「ここ、は?」
「保健室だよ。覚えてない?倒れたの」
「……あ」
そっか。私倒れたんだった……。
意識がハッキリしてくると消毒の独特な匂いが鼻についた。
……懐かしい、夢、みたな。
あれを毎日のようにみていたんだな……。
「あら、長田さん起きた?」
「あ、起きました!」
私の代わりに鴇田くんが返事をした。
先生が近寄って私のおでこに手を当てる。
「ん〜、熱は大丈夫そうね」
そう言うと私を見て笑う。
久しぶりに見た気がする、先生の顔。
あの時と変わらない笑顔だなっと思った。
近くで2人の話し声を耳にしてそんなことを思うと、鴇田くんが私に手を振って保健室を出ていった。
「さて、長田さん?」
「は、はいっ」
「あなた、ここ最近寝てないでしょう?」
静かな空間に先生のなめらかな声が響いた。
黙る私に続けて話す。
「そして、食事もシッカリ食べてないんじゃない?だめよ。女の子は体を一番に大事にしないといけないのだから。朝ごはんは食べてるの?」
厳しい口調のままそう問うと、私はそれに首を横に振った。
「お昼は?」
「たべてます」
「夜は?」
「……残してます」
そう言うと先生はかなしい表情をして小さく微笑んだ。