届かないこの想いを、胸に秘めて。





「長田さんに何があったのか、私は分からないけど。でもこういう事はいけないと思うのよ」



自然と握り締めていた手に先生の手が私の左手を優しく包む。

そして、トンと跳ねさせて顔をのぞき込んだ。




「……言わなくても分かるよね?」

「は、いっ」

「泣かないの〜ほらっおいで!」



2度しか喋ったことないのに先生はそう言って腕を広げた。


それに私は首を振って断った。



おもしろい先生だなと思う。

まるで友だちのように心を通わせて、その優しい雰囲気で全てを包むから。




「私に出来ることがあれば遠慮しないで言っていいからね?」

「っ……ありがとう、ございますっ」



我慢していた分の涙たちが溢れに溢れかえった。


少しこの涙に怖さを覚える。
また、泣く日々が続くのかもしれないと思ったから。




また、神様に頼っても、いいかな?




──神様、私に勇気をください。またキミを想っていきたいから。



たとえ、悲しくても苦しくても、それを乗り越えられる大きな、勇気を──。





そう願った瞬間。
閉じ込めたキミへの想いが溢れ出した。









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