届かないこの想いを、胸に秘めて。
帰りの時間が近づくにつれて、私の心は大きな音を響かせていた。
さっきまで……というか、朝からお昼まで全くしていなかったのに。
なんで、よりにもよって、今なの!?
もう完全に意識をしてしまったから、高鳴りは加速していくばかりで、かなり参ってる。
……ついに、この時が来てしまった。
鴇田くんは私の列の一番前の席にいる。
立ち上がった彼は私に振り向いて手を振った。
だから私も手を振る。
そうしながらも心の中で自分を奮い立たせる声が何度も何度も叫んでる。
──行け!
そんなの分かってる。わかってるよっ。
……でも。
その時、背中を押された。優しく。
振り向くと、香奈恵ちゃんと和海ちゃんが笑っていた。
「頑張るんだろ?」
「せっちゃんなら大丈夫!」
……香奈恵ちゃん。和海ちゃん。
2人はいつもそうだ。いつだってそう。笑顔で手を差し伸べて、私の心を温かく包んでくれる。
私の大切な親友。
2人の手がもう一度、背中を押した。
大丈夫。
そう繰り返す。
「私っ、行ってくる!」
今まで出したことのない声を出したと思う。
でもそんなの構わない。
私は鴇田くんの元へ駆けて行った。
後ろから2人の声がまた背中を押した。