届かないこの想いを、胸に秘めて。





鴇田くんの姿を昇降口で見つけた。


近付いて行くと足が止まった。


キミを見つけたから。


仲良く話している3人組。その中で一番輝いて見えるキミの姿。



久しぶりに近くで見るキミは変わらない柔らかな笑みを浮かべている。

それに胸を高鳴らせ、ゆっくりと距離を縮めていった。





「鴇田くん」

「あ、長田さん」


どうした?という表情をする彼に言葉を詰まらせていると、何かを察したように小さく声をあげた。



「あ!そうだったー。ごめん!長田さんっすっかり忘れてた」


ははは、と薄笑いする彼にぎこちなく頷ずいた。

話を合わせるために。



鴇田くん、なんでそんな……?


少しずつ罪悪感が芽生えた。


これから、この笑顔を私は──。







< 255 / 306 >

この作品をシェア

pagetop