届かないこの想いを、胸に秘めて。
「行こっか」
「あ、うん。……ごめんね。一緒に帰るところだったのに」
「気にしないで、長田さん。鴇田とはここでたまたま会っただけだから」
「うわー淳介。そーゆーこと言うんだー」
「だってそうじゃん」
目の前で小突き合うふたりをみて、仲良しだなと笑う。
それにキミってこういう事も言うんだと、自分にとって新たな発見をみつけた。
ふとサナくんと目が合って「いつもこうなんだよ」と笑って言うからより強く頷けた。
……気のせいかな?サナくんが悲しそうに笑ったのは。
今すぐにでもキミに伝えたい。
いまの私なら伝えられそうな気がする。
目の前に、すぐ手を伸ばせるところに、キミがいる。
でもその前に、私には準備が必要なんだ。
心の準備もそうだけど、キミに伝えるには今抱えている全てを、キレイに整頓しておきたいから。
「……大丈夫?長田さん、顔赤いけど……?」
その声とともに体が弾かれた。
のぞき込んできたのは、キミだったから。
間近にある顔に驚いて、一歩下がってしまった。
……なんか、悪いことしちゃったかな。不思議に思われたかな……。
そう思いながらも顔が熱くなっていくのを感じて、キミに見られまいと俯いた。
「あ……っと、じゃ、オレたち帰るわ」
「お、じゃーな!」
サナくんの声でパッと顔を上げると、2人が私たちに手を振って、背を向けて歩いて行った。