届かないこの想いを、胸に秘めて。





「あ、ここだとあれだから、どっか教室に行こっか?」



落ち着いてきた私にそう尋ねた鴇田くん。



確かに、ここで話すのはちょっと、いや、かなり言いにくいかもしれない。

昇降口なんて生徒の出入口だから、いつなん時だって人が来ないとは限らない。



そう思ったそばから、私たちの後ろを3人の生徒が通り去った。



それに顔を合わせて笑い合う。




「それなら、いい場所が、あるよ!」



ふたりきりになれる最適な場所は多分、いくつかあるだろうけど、私たちが絆を深め確かめ合った場所は一番『いい場所』だと思うんだ。





階段を上って4階へ。

上りながら何度も鴇田くんに謝った。



言ってから気付くなんて、私って……。
もう叫びたい。『馬鹿でごめんなさーい!』って。



1階から4階へ。しかも階段で。
ただでさえ、3階へ行くのにもキツイっていうのに。



鴇田くんは全然余裕そうで、とても羨ましいと思った。

そんな彼は息切れひとつもしていなく、「どこかな〜」なんてのんきに探している。




長い廊下を歩き進めると、右側に教室がみえた。



「おっ、ここ?」

指を指して言う彼に私は首を横に振った。




「え!?じゃあどこ?!」

「実はね、ここなんだよ」


小さく笑ってそこへ2、3歩歩み寄った。






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