届かないこの想いを、胸に秘めて。





翌日、重い足取りで学校へ向かい、教室へ。



昨日はなかなか寝につけなかった。
だから、目の下にクマが出来てるんだけど、隠すこともせずにそのまま来てしまった。



寒さも忘れていたみたいで、今になって体が震えだしてストーブの前に立った。



やっぱり幸せ、と心の中で呟き水蒸気に手をかざして更に温めようとする。




教室にはまだ誰もいないから、私ひとりってわけで、でもなんでストーブが点いているのだろうと不思議に思った。





「おはよう、長田さん」


振り向くとそこには笑顔で立っている鴇田くんがいた。



「クク、長田さんってかわいいよね」

「ヘ!?」

「これ俺が点けたんだ〜」



私のアホな返事をスルーして指をさすそれに目を向ける。


か、かわいい!?

鴇田くんはどこを見てそんなことを言うのだろう?




そう思いつつ彼が笑っていることに胸をなでおろした。


笑顔でいてくれた。よかった。


嬉しくて口元が緩む。




「頑張ってね」


不意に言われたことにストーブから目を外して彼を見上げる。




「……悔しいけど、応援してるから」


ニッと笑う鴇田くんに私が頷いて「ありがとう」と言うと更に笑って、一度だけポンと頭に手を置いて、友達のところに行ってしまった。



明るく友達とはしゃぐ声を耳にしながら、ストーブに向き直る。






──ありがとう。




もう一度鴇田くんに呟く、心の中で。


キミに伝えるまでの一つ目のやるべき事を終えた私は、次にやるべき事を思って、手を強く握った。






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