届かないこの想いを、胸に秘めて。




「長田さん、ちょー痛そうな顔してる」

「そうよ〜。去年と同じ顔ね」



はいっ終わり!と膝に絆創膏を貼り付けて立ち上がる先生を少し睨んだ。



それに、ふふふと意味ありげに笑うから、小さく息を吐いて「ありがとうございました」と言って立ち上がった。




まったく、先生は。絶対に勘違いしてる。
私たちはそんな関係じゃないのに。



しかもキミにこんな顔を見られてしまったし、恥ずかしすぎて返す言葉もない。




声を揃えて先生に挨拶をしてから、廊下に出た。



この静寂さが、ふたりきりということを意識させて、再び高鳴りだす。



もうHRが終わるころだろうなと思い、少し前を歩いてるキミを見た。



低くもなく高くもない身長に、やわらかそうな黒髪が歩く度に少し揺れてて、そこからひと房、ぴょこんとはねている髪を見つけて可愛いなって思った。




やっぱりまだキミは私にとって遠い存在だ。


キミには桃田さんという可愛い彼女がいるのだから。


キミに決して届くことのない、この想い。



だからね、諦めるために私はキミに告白をしたい。


伝えれば終われる気がするから。それ以上なんて望まない。

ただ好きってことを、キミに伝えたい。それだけ。







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