届かないこの想いを、胸に秘めて。
「ゔっ」
鼻に痛みを感じて我に返った。
ここはもう3階だと確認しつつ、鼻を押さえてキミを見上げた。
背中を向けたまま動こうとしないキミに不安を抱き、顔をのぞこうと一歩横に出る。
すると、ほぼ同じタイミングでキミも向いた。
私に向けられた目にドキッとする。
「長田さん」
「っ、はい」
「その、……」
口ごもるキミに首を傾げる。
HRが終わったのかあちこちから椅子を引く音が響いた。
何を言おうとしているのか読み取ろうと試みたけど、何も分からくて、
こんな時超能力が使えたらな、
なんてのんきに考えているとキミが口を開いた。
「長田さんって、鴇田の……」
「鴇田くん?」
「っ……や、やっぱなんでもないや」
ふわっと笑うキミを不思議に思う。
明らかに違う笑い方だった。どこか不安そうで哀しそうな、そんな表情をしてみえた。
「あ、気にしないでね?」
「あ、うん」
「じゃあね!……鴇田によろしくっ」
そう言ってキミは私に背を向けて走って行ってしまった。