届かないこの想いを、胸に秘めて。
駅まで一緒だと知り、話しながら歩く。
アスファルトにはふたつの影が薄く長く寄り添っていて、私の頭が少し高い位置にあるのを目に優越感を覚えた。
話は尽きなくて、笑ったり懐かしんだり、哀しんだり。
すべてキミを想っていろんな感情を出し合った。
少し怒りを露わにすると、紗姫ちゃん自ら話し出した。私がお手洗いで耳にしたことを。
「大体さ、なんであたしが人の彼氏を取らないといけないワケ?!意味分かんない!あたしここに来てまだ2ヶ月しか経ってないんだよ?!」
少し前を歩く紗姫ちゃんは栗色の髪を揺らして頬を膨らませて怒っていて、そんな私はその様子を微笑ましく見ている。
もう何しても可愛く見えてだめなんですけど。
小さくて可愛いってほんと確信犯だよ。
「ほんと女ってめんどくさい」
彼女のものとは思えない低い声にギョッとした。
でもこれが紗姫ちゃんの本心なのかな?
話してみて分かったことは、意外と男っぽいってとこ。
昔から男子といることが多かったから、と言っていたから、それが定着しちゃって今の紗姫ちゃんがいるのだろうと自己解析した。
「でも、雪菜ちゃんならいいかな」
「へ?」
「ううん、なんでもない」
誤魔化して笑う紗姫ちゃんに首を傾げたけど、なにも言わずそのまま歩き進めるから私も突き詰めようとはしなかった。