届かないこの想いを、胸に秘めて。
駅に着くと私たちはそれぞれのホームへ。
「ありがとう!」
そう私の背中に呼びかけた彼女の声に振り向いた。
今日は何度驚きの声をあげているのかと思うばかりだ。
なんでそんな言葉をくれるのか不思議に思う。
それは私が言うべきことなのに。
笑顔で手を振る彼女に喉を熱くさせた。それをこらえて手を振り返す。
「頑張って!応援してるから。ほんっとに悔しいけど!」
遠くから彼女を見ているけどいま泣き笑いのような顔をしているように見えた。
たぶん私も同じ顔をしている。
「うん!ありがとう!」
こんなにスッキリするとは思わなくて少し不安になるけど、こうなったのは紗姫ちゃんの心の広さだと思った。
ホームへ着くと向かい側で紗姫ちゃんの姿を見つけて、手を振った。
──ありがとう。
先に電車が来たのは向かい側のホームで、過ぎ去った後を眺めてそう心の中で呟いた。
これで二つ目のやるべき事が終わった。あとは、キミだけ。
ドキドキするけど、意外と心は穏やかで小さく笑う。
もうすぐ私の恋ともお別れだ。
最後は泣かずに、笑顔でいようと思う。
キミの前では笑顔の私でいたいから。そしてキミの、中村くんの笑顔を目に焼き付けたいから。最後に。
この恋をいつか素敵な想い出と語れるように。
がんばれ、私。
薄明かりの夕日色をした空は私を勇気づけてくれている気がした。