届かないこの想いを、胸に秘めて。




「長田さん、ありがとう。嬉しい」



この言葉はさっきも聞いた。私の前に告白していた女の子に告げていたものだったから。


そっか、私も振られるんだ。


この言葉はキミが振る時の前触れなんだね。
最後の最後まで、キミはずるいな。

悔しすぎて、笑っちゃうよ……。




涙はだいぶ治まった。もう、心の準備はできている。

どうぞ、言ってください。





キミと目を合わせた。

笑っているキミは悩ませた表情をして私から視線を外した。


スッとポケットからキミが手紙を取り出す。


それに驚いてキミに視線を向けた。




「……これ、くれないの?」

「うん」


だって元々キミにあげるつもりない手紙だもん。



「チョコは?」

「えっ?」

「今日、一応バレンタイン、じゃん?」


なにを言っているの?
なんでそんな目をするの?なんで顔を紅くするの……?



「ない、よ?」

「そうなんだ……」


しゅんと肩を落としてうなだれているキミを不思議に見ていると、上目遣いぎみに目が合った。



う、なにこの角度っ。もうなんなのっ。




「あ、あの!振るんだったら早くっ──!?」

「言わないよ。そんなこと」






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