届かないこの想いを、胸に秘めて。





先生が入ってきて、今日の予定を伝える。

一番前の席にいる和海ちゃんは、メモを取っている様子がみられた。

一方、香奈恵ちゃんはというと、まだ夢の中へいるみたい。



チャイムが鳴った瞬間、スクっと起き上がってふらふらしながら自分の席に着いていった香奈恵ちゃん。

私たちに一言もひと目もくれなかったから、寝ぼけているんだと感じとった。


そして、今は前の席にいる男の子、一緒の美化委員を組むことになった鴇田(トキタ)くんにちょっかいを出されている。


私は思わず吹き出しそうになった。


だって、香奈恵ちゃんの頭の上にいくつものお菓子の箱やら、消しゴムやら、……とにかく何でも乗せていってたから。


その様子を笑いこらえながら見守っていると、いたずらをしている鴇田くんと目が合った。


そして、自分の口元に人差し指をもってって、私に笑いかける。

だから、私も頷いてにわかに笑った。








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