届かないこの想いを、胸に秘めて。
コツン、とキミと私のおでこがくっつけられる。
目が合って、ふたり揃って笑う。
こんな近くにキミがいることが未だに信じがたくて、キミのブレザーをつまんだ。
キメ細かく少しざらついた生地の感触に顔がほころんでいく。
「なに笑ってるの?」
離れたキミが私を少しのぞき込む。それに可愛いと思ってまた笑った。
「なんか、夢みたいで。すごく嬉しいのに」
もう夢じゃないって分かってるのに、どうしても信じられないの。
そう頭が勝手に思い込もうとするから。
キミは何かを考えるようにしてから、そっと私の両手を取って包んだ。
ギョッとしてキミとそれを交互に何度か見る。
「長田さん、今度は俺の番ね」
「ぅへ?」
マヌケな声をあげた私にキミはこう言ったんだ。
「長田さん、俺と付き合ってください」
私たちを包み込む夕日はどこまでも広がっていて、綺麗なオレンジ色に染めている。
それは私とキミの未来を祝福しているかのように思えた──。