届かないこの想いを、胸に秘めて。





「……中村だよ」


その名前に私の耳が素早く反応した。

手の動きは止めず、先生の話に傾けながらもう一つの話を聞く。



といっても、両耳で二つの情報を聞き入れるなんて聖徳太子でもない私は、もう完全に鴇田くんたちの話に耳を傾けていた。



「あいつ、メールは寄こしてんだけどさ」

ほら、とサナと呼ばれてる男の子はスマホを鴇田くんに見せている。


「大でもしてんじゃね!?」

「うわー有り得なくもないな」

そんな冗談交じりの会話を隣で聞いてた
私は聞いていてとても恥ずかしく思った。

まさか、こんな話を聞くなんてっ。



……うん、聞かなかったことにしよう。







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