届かないこの想いを、胸に秘めて。
ほんの少し正門の方を眺めてから、立ち上がって昇降口へ向かった。
上履きからローファーに履き替えて正門へ足を向ける。
──ポツ。
鼻先に雫が当たった。
そういえば、なんかの冊子にこんなことが書かれてあった気がする。
【雨が降り出した、最初の雨粒が鼻先に当たると、あなたにいいことが起こる】
と。
実際にはそんな夢みたいなことが起こるはずもない。
だって、2度もそんなことを経験して何も起きなかったんだから。
そんなのはただのジンクスに過ぎないんだと。