届かないこの想いを、胸に秘めて。





雨は正門に向かいながら勢いを強め、正門を出た頃には土砂降りになっていた。


1分もしない内に、ローファーの中はずぶ濡れで足元がとても気持ち悪い。


坂道を下りながら、居心地の悪い靴の音を鳴らせて歩く。




「え……」


マヌケた声が漏れた。


前から走ってくる人を見て。

傘をささず、この急な坂を走っているキミはとてもかっこよく見えた。



……おかしいかな?
ずぶ濡れで走っているキミをかっこいいなんて思ってしまうのは。


キミが私の横を通り過ぎた。

ふわっと石けんの香りがした。


それはあの時保健室まで連れてってくれた時と同じにおいだった。






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