届かないこの想いを、胸に秘めて。





駅に着くと、もうとっくに帰ったはずの鴇田くんたちがいた。


とくに話しかけるほどの仲じゃないから、そのままホームへ向かった。


けど、私の足はピタッと止まった。


なぜなら、私を呼んだ声がしたから。


声のした方へ顔を向けると「長田さーん」と手を振っている鴇田くんがいた。


私はこっちに来るように促され、歩み寄った。


はてなを浮かべて鴇田くんを見上げる。


「ごめん、呼び止めちゃって」

意外にも律義な彼に私は「大丈夫だよ」と言った。



「あのさ、長田さんってこれから用事とかってあったりする?」

「ないよ?」



なんでそんなこと聞くんだろう。

疑問に思っていると隣にいるサナくんが言った。



「俺達さ、これからバイトあって行かないといけないんだよ。だからちょっと頼んでいいかな?」

そう言って私にリュックを手渡す。


私はシンプルな紺色のリュックを凝視した。


まさか、これって……。





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