届かないこの想いを、胸に秘めて。





私はスクバをかけ直して、キミに頭を下げた。
そして背を向けて改札口へ向かった。




「ま、待って」

「……っ」

「……途中までいい?」

「……え」


キミは私の隣に来て顔をのぞき込んだ。



予想外の出来事にびっくりしていると、もう一度「いい?」と聞いてきた。

だから、ぎこちないけど頷いた。




途中って言ったからホームは別なのかと思ったけど、一緒のホームで。

一緒の電車に乗った。


ドアを挟むように両端に立ち、ふたりして外を眺める。




キミはずっと外を見ていたけど、私はドアの向こうに映っている、キミを見ていた。







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