届かないこの想いを、胸に秘めて。
最寄り駅名がアナウンスされるとキミと目が合った。
ドキッとして、とてつもなく恥ずかしさが込み上がる。
そんなことに気付かないキミは、私に笑いかけた。
だから私も笑いかけた。
それがとても嬉しいけど、切ない。
電車を降りて数歩歩いて振り返った。
もうすぐ扉が閉まって出発するであろう電車からキミが口を開く。
「長田さん、ありがとう!」
その言葉を合図に扉が閉まり、行ってしまった。
……これは夢?
名前、知られてた。
どうしよう。こんなに嬉しいのに。
……苦しい。
喉が熱くなって込み上げてくるそれを、必死に止めようとした。
私は胸に手を当てて心の中で告げた。
キミに伝えたい言葉を。