届かないこの想いを、胸に秘めて。





また、教室に戻ってきてしまった。


図書室はこういう日に限って開いていなかった。
だからここに来るしか、なかった。




香奈恵ちゃんには嘘をついて

【急な用事があるのを忘れてたから、先に帰るねっ。ごめんね。また明日】

と打って送信した。




……ごめんね、香奈恵ちゃん。
でも、今は香奈恵ちゃんの顔を見たくない。

ごめんね。


瞼を閉じると机にふたつの雫が落ちた。






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