届かないこの想いを、胸に秘めて。





「お前な〜」

「頑張ってるじゃんっ」

「どこがだ?いつも寝てるじゃないか」


そのやりとりに上がりかけた腰を下ろした。


すると、「あれっ?」と明るめの声が廊下から飛んできた。

続けて「……長田さん?」といって教室前で立ち止まった。




……なんで、立ち止まるの。

私なんか気にしないで、行けばいいのに。



そう思っていると、先生に一言告げた彼がゆっくりこちらに近付いてきた。




「こんな、暗いとことでなにしてんの?」

私に質問する鴇田くん。


私はなるべく顔をあげないようにして、「……勉強、です」と答えた。



とても馬鹿な答え方だと思った。
こんな嘘、絶対にばれる。



でも鴇田くんは、「そうなんだ〜」と促した。






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