届かないこの想いを、胸に秘めて。
「ねね、今日さ月末にオープンする水族館があるんだけど行かない?」
その声に伸ばした手がピタリと止まる。
和海ちゃんー。
せっかく仕返ししようとしたのにっ。
私がしょぼくれていると、香奈恵ちゃんが目を光らせて右手を真っ直ぐに挙げて声を発していた。
「行く!行きます行きます!」
「ふふ、そう言ってくれると思ったよ」
せっちゃんは?とまだ手を挙げていない私に和海ちゃんが問いかけた。
『せっちゃん』とは私のこと。
今は、和海ちゃんだけが呼ぶ私のあだ名。
反抗できなかったことに落ち込みながらも、気を取り直して「もちろん!」と答えた。