届かないこの想いを、胸に秘めて。
「雪菜、聞いてよ!中村がね……──」
そばで嬉しそうに語る香奈恵ちゃん。
だけど私は最低で。
話している途中に「……ごめん、ちょっとお手洗いに行ってくる」と言って、足早に立ち去った。
私はどんな顔をして言ったんだろう。
ただ酷い顔ということは、間違いない。
……っ、ごめんねっ、香奈恵ちゃん。
嬉しそうに、楽しそうに話をしてくれるのは親友として、とてもうれしい。
けど、その表情も声も、内容も、聞きたくない。
……すべてが今の私にはとても辛いよ。
なるべく遠いところへ行きたくて、狭い校舎を走った。
ぼやけていく視界を拭いながら。