届かないこの想いを、胸に秘めて。





「体育祭さ〜──」

丸いシンプルなテーブルを囲んで体育祭の話をしだした和海ちゃん。

私は部屋着兼用の寝間着のまま、その話をずっと聞いている。

とても楽しそうに話すから自然と笑みがこぼれた。



「和海ちゃん、その荷物どうしたの?」

途切れのよさそうなタイミングで、和海ちゃんの隣にあるボストンバッグを指さした。


「ん?ああ!これね。今日のお泊りセット!」

ポンとそれを叩いて言う和海ちゃんに私は瞬きをして、もう一回尋ねた。


そしてまた同じことを言った。



「ここに、泊まるの?!」

「うん!お世話になります♪」

丁寧にお辞儀をされてしまった。


嬉しさと驚きで目が開きっぱなしの状態に、和海ちゃんが笑う。




「だ・か・ら!たーっくさん語ろうね!」

目をキラキラさせて言うから、私は少し動揺しながらも頷いた。


わくわくするけど、なんか不安だな……。
この調子だと、いろいろ聞かれそうだよ。


目の前でご機嫌な和海ちゃんに私は、覚悟を決めた。


何聞かれても全て本当のことを言おう、と。








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