届かないこの想いを、胸に秘めて。
お昼頃、部屋に顔を覗かせたお母さんが私たちに呼びかけた。
下へ行くと、卵の甘い匂いがした。
「やった!オムライスだよ!この香り!」
後ろで弾んだ声に笑い、同じことを思ってるんだと思ったら嬉しくなった。
この香りは私たち2人の思い出の品なんだ。
昔から和海ちゃんが家に来る日はオムライスが出てくるの。
私も和海ちゃんもオムライスが大好きってのも出てくる理由の一つでもあるんだよね。
テーブルに置かれてあるオムライスに目をやりながら、指定位置に座った。
和海ちゃんも指定位置へ。
といっても、向かい側のお姉ちゃんの席に。
ふたりで声を合わせてから、それをつっつく。
そして、笑顔になった。
「やっぱ、せっちゃん家のオムライス最高!」
「ふふふ、なーちゃんに喜んでもらえて嬉しいわ」
「もう、ずっとここに居たいくらいです!」
口に頬張る和海ちゃんはとても幸せそうで、お母さんも嬉しそうに笑った。
「私も、お母さんのオムライス大好きだよ」
私の突然の告白に、お母さんがキョトンとさせて私をみて笑う。
思ったことを言ったのに、なんでだか顔が熱くなってきて、恥ずかしくなった。
その様子に2人が笑うから一段と恥ずかしさが込み上げた。