届かないこの想いを、胸に秘めて。





「ふふ、なんて顔してんの」

意外にも違うことを言われてハッとしてホッとした。


私は笑って誤魔化す。



少し空気がひんやりとしたけど、それは隙間風だと気付いた。




「ねぇ、せっちゃん」

「あのね、和海ちゃん」


意を決して口を開くと、声が重なった。

それにふたりで笑う。


「いいよ、せっちゃんからで」

「ううん、私は後ででいいよ」


そう断って、和海ちゃんの言葉を待つことにした。


和海ちゃんは、『わかった』と一言だけ呟いて、そして小さく息を吐いた。









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