届かないこの想いを、胸に秘めて。





「ンンー!んうンーーっ」

「ぷっ、何言ってるわかんないよ」

言葉にならない声で私の手を叩く和海ちゃん。

手を離すと思いっ切り息を吸っていた。



「もー、静かにしてよねっ」

「ご、……ごめんごめん」


もう日付が変わっててもまだ深夜。
何事かって起きてきちゃうかもしれないんだから。




「そっかー、一目惚れ、かあ」

私をみて言った。

その顔がどんどん崩壊していくのが見えて、私は恥ずかしくなった。


そこは怒るところなのかもしれないけど、私は強調された言葉に顔を紅くさせた。





「で、どうするの!?」

「どう、するって?」

「告るの?ってことだよ」

それしかないでしょ、とでも言っているような顔で私に寄ってきた。


そんな期待されるような顔を向けられても、困るんだけどなー。


告るのが怖くて勇気のない私の答えはもちろん決まっていて。





「…………告らないよ」

小さな声で言った。

和海ちゃんにはちゃんと聞こえてたみたいで、驚いた声があがった。


そして、「なんで」って。


だって、もう。



「好きになるのやめた、から」


少し揺らいだ心を隠し、和海ちゃんの目を見た。










< 96 / 306 >

この作品をシェア

pagetop