星の願いは?
頭の内で色々と考えたが、シホは何も喋らない…普段から無口な昇も重いと感じる沈黙…
アパートの前で大家に出会った

「おかえり荒垣くん、今日も冷えるねぇ…うー寒い寒い…そういえば荷物を預かっ…ん?その子は?」

シホは俯いたまま大家へ元気なく挨拶する

「…シホ…です…」

自分の体で隠す様にシホの前に出て昇が説明する

「僕の弟です…すみません…風邪で体調が…荷物は後で取りに行きます」

「そうかい?お大事にね…」

大家に頭を下げ、部屋のカギを開け中へ入る

〝やれやれ…見えてなかったよな…たぶん…〟

…昇は俯いたままのシホの頭へ片手をのせ呟く

「…泣くな…」

床へ数滴の涙が落ちた…ずっと俯き無言だったのは泣くのを我慢していたみたいだ…

「ノボ…ル…ごめ…なっ…さい…」

何故、泣いているかは解らない、しかし

〝……今だけ許す…ぐずられるよりマシだ…〟

「ウウッ…ごめんなさい…ノボル…ノボル」

何度も昇の名前を呼び、大きな声でシホは泣き出す

〝…うるさいな……まぁいい…〟

「ありがとう…シホ」

これも理解が出来ないが昇はシホへ感謝を言葉にする…しかし、シホの泣き声も落ち着き出した

「優しいね…ノボルは本当に…ボク…何となくだけどノボルの願いがわかった気がするんだ」

〝…そうか…だけど今は聞きたくない…〟

「うん、ボクも今は言いたくない…」

〝…荷物…取りに行ってくるから…着替えてろ…〟

昇は大家の部屋を訪ね、荷物を受け取る

「ありがとうございます…助かりました」

「いいよ、こういうのも大家の務めだからね…荒垣くん、あの子だけど…」

「シホ…ですか?…しばらく預かる事になりました」

「うん、それは問題ないよ…ただね…気を付けた方がいい…」

「…?…何をですか?」

「いや、上手く言えなくて悪いんだけどね、シホくんは風邪じゃない…心の準備ってのをしてた方がいい…荒垣くん自身がね…」

「…はい…ありがとうございます…では、失礼します…」

荷物を抱え部屋へ戻ると、シホが夕食を作っていた

「おかえり!…肉じゃが…で合ってるよね?」

〝…元気になってる…どうでもいいが…大正解だ…〟

「よかった~ノボルがカレーかどっちかで迷ってたから、先ずは肉じゃがにして違ってたらカレーにするつもりだった♪」

菜箸を片手に、親指をグッと立てるシホ

〝…主婦みたいだな…まぁいい…腹がへった…〟

「よし!じゃあ、もう少し時間かかるからノボルは座って待ってて~」

〝…さっきまで沈んでたのが嘘みたいだ…無理してるのか?〟

「してないよー!さっきのは…無しっ!」

〝ああ…そうしよう…それがいい…〟

大家が言っていた事が頭をよぎるが今は考えない事にした…

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