星の願いは?
謎の少年は夜空を見上げて両手を大きく広げ、目を輝かせピョンピョンと跳ねる。

「スゴいねっ!ここからはこんなに綺麗に観えるんだ!スゴいなぁ!」

クルクルと、まるで躍る様に近付いてきた。

〝…元気なヤツだな…でも…うるさい〟

少年は星空を指差しながら告げた。

「ボクは、あれだよ!流れ星だよ!」

〝…やっと自分の正体を明かした…でも…否化学的にもほどがあるぞ…流れ星?〟

「ノボルの想いを聞いてたら、ここにいたんだよ~!不思議だよね~奇跡の出逢い!?まぁそこは置いといて…っと!ねぇねぇボクの願いって何かな?」

〝知らん…うるさい…流れ星なら誰かさんの願いを叶えてどこか行ってくれ…
…俺は何も願ってない…〟


「あくまで、信じないかぁ…じゃあ…ちょっとだけ静かにしてね?」

目を閉じ、耳をすませ何か探している様子

〝…静かにしてね?…うるさいのはお前だろ…〟

「しっ!…ノボルの声が一番大きく聞こえるから集中しないと周りが聞こえないっ!………よしっ!これくらいならっ」

少年の体がぼんやり光り、輝く粉塵が舞う様に見えたと思うと、少し離れた場所にいるスマホを片手にした男が叫び出した。

「ヤッター!限定キター!流れ星サイコー!」

〝…うるさいな…何かゲームか?…どうでもいい…だが…うるさい…〟

「ふぅ~…あの人の願いを叶えたんだよ…ちょっと疲れるね…ノボル信じてくれた?…」

〝いや…偶然だろ?…でもなんかコイツ光ってたけど…あと…なんか、うるさくなくなったな…〟

これも偶然か、見覚えのある長身で体格の良い青年がこちらに走ってきた。

「おお!やっぱり昇やんかっ!?何してんの?」

〝うわ…うるさいのに見つかった…最悪だ…酒くさい…同じ大学で…ただ出身が同じだからって…絡んでくるなよ…〟

「せぇーっかく合コン誘ったったのに、バイトある言うて何や?…昇、お前?そういう趣味やったんか!?」

〝…変な勘違いしてる…どうでもいいが…噂になるのはごめんだ…仕方ない……〟

ーーーー。

「…シホ…帰ろう…寒い」

「え?シホって?…ボクの事?」

〝…聞こえるんだろ…合わせろ…〟

「確かに今日はごっつい寒いなぁ!はは~ん…帰ってお楽しみか?ん?」

「コイツは……シホ…久豆…志保…俺の弟…」

「クズ?…昇の苗字、荒垣やん?」

「旧姓…親が離婚した…今はちょっと…俺があずかってる…じゃあな…」

「せやったんか、知らんかったとはいえ…なんかスマンな…ううっ寒っ!冷えるから気つけて帰りや!ほな、シホくんもバイバイ!」

「ほら…シホ…こっちだ…行こう…」

〝…やれやれ…面倒くさい……流れでなったとはいえ…人と手を繋ぐなんて何年ぶりだろう…〟

「…ノ…ボル…ちょっと…」

さっきまでの元気が嘘の様に少年の足がふらついている。

〝…なんだ?…ああ…疲れたって言ってたな…仕方ない〟

昇は少年の身体を軽く抱き上げ歩き出した。

「ありがと…ごめんね」

〝…どうでもいいが…人を抱えて歩いたのは初めての経験だ…〟
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