新月の王 Ⅰ
~4年前~

学校が終わって塾までのわずか5分の道のりをわざわざ迎えに来る兄の後ろに乗って

「お兄ちゃん迎えはもういいよ」

「は?何言ってんだ?」

「塾ぐらい近いんだし一人で行けるよ」

「だから?」

「・・・だから?」

「そんなの俺が聞くと思ってんのか?」

「・・・だって」

「どうしても一人行くって言うなら、塾辞めっか?」

「は?どうしてそうなるの?」

「どうもこうもねぇ。ダメなもんはダメだ。分かったら諦めて早く行け。帰りまた来る」

「・・・」

「返事!」

「・・・はい」

「お前、一人で帰ったらどうなるか分かってんだろうな?」

「・・・分かってるよ」

「ならよし。行け」

最後はいつもこうして、にっこり笑って頭ポンポンされて、上手い事言って交わされて、結局何を言ったって聞いて貰えないんだ。
< 37 / 103 >

この作品をシェア

pagetop