新月の王 Ⅰ
「ねぇ美香ちゃん。君は頭が良い子だからこれがどういう事か分かるよねぇ?」

「・・・」

「分かるよねぇっ!」

「・・・すみませんでした」

「じゃあ制裁は待っててね」

「・・・っ」

「消えなよ」

「・・・っ」


目の前の女が震えて立ち竦む姿を見つめる碧の笑顔・・・こわっ!
やっぱり碧って一番冷酷なような気がする。


「ちょっと待って」


何故だろう。何だかとても理不尽な気がして、今すぐにでも逃げちゃいそうな美香ちゃんとやらをとめてしまった。


「碧、ごめん」

「なに?」

「口挟む」

「・・・・・・了解」


幹部の制裁中に口を挟むのはいけない事だと思う。だけど何か違う気がするから、言わせてもらう。


「ねぇ。何か言いたいことあるんじゃないの?」

「・・・」

「一人で私に文句言いに来たんでしょ?私がこの人たちの側にいるのが腹立つんでしょ?」

「・・・っ」

「彼女じゃないなら誰かを好きなんでしょ?」

「・・・」

「だったら何で何も言わないの?」

「・・・」

「私にビンタして嫌な女になる前にやる事あるんじゃないの?」

「・・・」

「私に文句言って、私が居なくなれば貴女の状況変わるの?私にはどうでもよくて、貴女の望む物が手に入るのならいつでも消えてあげる。だけど違うよね?何も変わらないよね?」

「・・・」

「嫉んで文句言ってないで自分の好きな人にちゃんと自分の気持ちぐらい自信持って伝えたら?」

「・・・」


何だか腹が立って来た。私に文句言って何が変わるの?
自分の価値を下げる行為なんか辞めれば良いのに。
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