新月の王 Ⅰ
「玲央ちゃんさ」

「はい?」

「なんで叩かれたの?」

「は?」

「玲央ちゃんなら避けれたし、やり返せたでしょ?」

「一人で来たから。卑怯に大勢で来てたらヤッてたと思う。だけどあの子は一人で言いに来たし、叩く手がね震えてた。私とは違う・・・」


あの子が私を叩く手は震えてた。普通の女子高生ならそうだ。
だけど私は・・・自分の手を見ながら思う。殴る事をなんとも思ってない。汚れてる気がしたから。


「・・・玲央ちゃん」

「玲央」

「・・・」

「玲央・・・」

「・・・っ」


下を向いて自分の拳を見つめながら呟く様に言ってしまった言葉に、みんなの顔が歪んでたなんて気付かなかった。


「だからあんな事言ってあげたの?」

「あんな事?」

「叩かれてあんな優しい事」

「優しいとは思わないけど、あの子は純粋に誰かを好きなんだと思って」

「・・・うん」

「目がね?嫉妬だけだった。憎悪がなかったから、誰かに引きずられる前にって思って」

「・・・そっか」

「碧・・・柊哉もみんなごめんね。口は挟んじゃダメだと分かってたけど我慢できなかった」

「それが玲央だろ?」

「え?」

「確かに」

「・・・えぇ」

「今までだって思ったこと言ってたじゃねぇか」

「むっ」

「今更なんだよ」

「・・・蓮まで」

「玲央カッコいいな」

「・・・駿」

「さすが俺らのお姫様だね」

「それ・・・さっきから何?」


ギロリと睨むと5人とも明後日の方を向いて目を泳がせて・・・どういう事よ?
きっちり説明して貰いましょうか?
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