夏の日、僕は君の運命を変える
息を吐くと、機械の向こうが静かになっているのに気が付いた。
僕は恐る恐る、今1番大事な人の名前を呼んだ。
「…心、ちゃん?」
『ごめん、水樹くん。
わたし、今…誰とも関わりたくない』
「心ちゃ…」
『今日は誘ってくれてありがとう。じゃあね』
「待って。最後に言わせてほしい」
引き止めたのは良いけど何を言えば良い?
頑張って?
いや、心ちゃんはもう十分頑張っている。
じゃあお休み?
休めるわけないでしょと怒鳴られてしまえばおしまいだ。
僕が、僕だけが言えること。
「僕は、何があっても心ちゃ…違う。
僕は…ここちゃんの味方だからね」
ここちゃんって呼んだのは、きっと気まぐれ。
さっき心ちゃんと呼ぼうとしたら遮られたから。
「ここちゃん。
ここちゃんはひとりじゃない、僕がいるよ。
…それだけは、忘れないでほしい」
それ以上言えなくて、電話を切った。
今の言葉が正しかったのか、僕にはわからない。
…調べてみようか、僕を。
僕であって僕じゃない、奥村水樹を。
きっと止められるかもしれない。
だけど…知らないといけない気がしてしまう。
全てが偽りで終わる前に。