夏の日、僕は君の運命を変える






「水樹」

「……お父さん…?」




いつの間にか眠っていたみたいで、目が覚めるとぐっしょり汗をかいていた。

額に貼りついた髪を分けていると、ベッドを囲んでいたカーテンが開き父が顔を見せた。



「太田くんから連絡を貰ったんだ。大丈夫か」

「……平気」

「記憶、少し戻ったのか」

「…完全にじゃないし、想像とか聞いた話とか混ざってる。
まだ、靄がかかって見えない部分が多いよ」

「……無理するなと言っただろう」

「でも…やっぱり僕思い出さなくちゃいけないんだ。
大事な人を守りたいんだ」



父は何も言わず目を細めた。

するとカーテンがまた開き、太田が顔を見せた。



「あ、水樹のおじさん。こんにちは」

「こんにちは。連絡ありがとう」

「いえ!
水樹、もう大丈夫か?」

「うん……」

「今日もバイトだろ。休んだ方が良いって」

「良いよ…今日も行く。ごめん、心配かけて」

「水樹、太田くんの言う通りにしなさい。
顔色も悪いし、まだ体調が万全じゃないのだろう?」

「……」

「今日は家で休んでいなさい」

「……わかった」




太田にも何回も休むよう言われながら、父と一緒に車で帰宅した。

正直まだ頭が痛む時がある。



「お父さん仕事は…?」

「水樹を置いて行けるか」

「良いよ、僕は家でゆっくりしているから。
仕事行ってきて良いよ」

「……バイトには行くなよ」

「うん。
あとで休みの連絡いれておくよ」

「いや、今しなさい」



言われた通り、父の前でアルバイトへ休みの連絡を入れると、父は「ゆっくりしているんだぞ」と何度も繰り返し仕事に向かった。

僕は部屋にあるパソコンを立ち上げ、事故を調べた。



ごめんね、お父さん、太田、筧さん、宍戸先輩。

やっぱり僕、調べたいんだ。

筧さんが言う通り、彼女を救えるのは僕だけの気がするから。

うぬぼれなんかじゃない。

彼女と繋がっている僕が、助けないといけないんだ。




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